【9/30(木)】個別指導の神様が降りてきた・リターンズ~大手塾VS個人塾~(41)最後の戦い②

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三月に入った。

■場面は、“天下一個別”の本社ビル内。

会議室には、いつものように、参謀・キーツネと営業本部長の塩川がいた。

「塩川君、調子はどうだね?」

「はい、すこぶる順調です!」

「順調とか、抽象的なことを言わずに、具体的に数字で言ってくれるかな?」

「はい、すみません!」

塩川は業績資料をキーツネに見せながら、今の状況を説明していった。

「うむ、うむ。」

「というわけで、テレビCMとチラシのコラボは、今のところ当たりにあたっています。そして、例の“顧客満足度アンケート”の戦略も功を奏して、退塾防止に結構つながっています。恐らく、このまま行けば、あの憎々しい“個勉塾”に勝てるはずです。」

「そうだといいんだが…。」

「今回ばかりは大丈夫です!」

「ところで、“個勉塾”の数字状況に関する情報はないのか?」

「はい。ここに、奴らの業績資料がありますので、見てください。」

「ん?これはどうしたんだ?もしかして、敵にスパイを送り込んでいるのか?」

「いえ。ゴミをあさって、ゲットしました!」

「ゴミだって?」

「はい!」

「・・・。」

「あれっ?キーツネさん、どうかされました?」

「キミは何をしてるんだ!ゴミをあさるなんて、まともな人間のすることじゃない!人としてのプライドはないのか!情けない!」

「あっ、すみません…。てっきり、キーツネさんに褒めてもらえるかと思いまして…。」

「ミーがそんなダサいやり方を認めるわけがないだろう!ミーはキングオブ個別指導の神様だぞ!」

「申し訳ございません!では、この資料は破り捨てることに…。」

「待て、待て!とりあえず、見せろ!」

「えっ?ゴミから取って来た資料ですけど、ご覧になるんですか?そんなことをしたら、キーツネさんの気品に傷がつくのでは?」

「ミーはゴミからは拾わない。でも、既にキミの手にあるということは、すなわち、それはゴミではないと言うことだ。」

「う~ん…何だか変な理屈ですね~。」

「うるさい!」

「まあ、いいや。ゴミですけど、どうぞ、どうぞ、ご覧くださいませ。へへ…。」

「ふん!」

資料を見たキーツネの顔がだんだん険しくなっていった。

「あれ?キーツネさん、どうかされました?」

「どうかされただと?キミはこれを見て、何も思わないのか?」

「はい。退塾も一杯出て最悪ですし、問い合わせも少なくて、“この塾、このままで大丈夫ですか~”って思います!」

「キミの目は節穴か…。いや、目だけじゃない。頭も空っぽだ。」

「えっ?どうしてですか?業績的には全然ダメじゃないですか?」

「二月はな。でも、三月に入って数字が改善してきているだろう?」

「そうですかね。確かに、退塾は三月に入ってから出ていないようですけど、問い合わせは全然伸びていないと思うんですけど…。」

「だから、キミは甘いんだ。」

 

 

■場面は変わって、“からくり屋珈琲店”。

今日も、我利勉のパートナーは、タヌーキではなく、営業本部長の下村だった。

「我利先生、先日、相談させてもらった作戦は順調に進行しています。」

「それは良かった。」

「まず、教室の空気を乱している三名の生徒の件ですが、保護者を呼んで、ちゃんと話し合いをしました。」

「うん。」

「そのうちの二名は、保護者の協力もあって、生徒自身もちゃんとルールを守るから、この“個勉塾”で頑張りたいと言ってきたんです。」

「うん、うん。」

「だから、自習に耐えうるレベルに達するまでは授業を増やしてもらうことと、一応、自習に関しては、毎日来させるのではなく、自習対応の講師を配置しているところだけに来させることにしました。もちろん、ルールを破ったら家に帰らせること、それでも直らないようなら、退塾してもらうことの約束付きです。」

「なるほど。」

「もちろん、家に帰すことも、退塾させることも本意ではないので、そうならないようにできる限りのサポートをしようと思っています。」

「そうだね。その子の自習を機能させようと思ったら、自分で進めていける問題の選定や、自習監督のこまめな声掛けなんかも大事だから、そこは注意してあげてね。」

「はい。」

「ただ、残りの一名なんですが、どうしても“頑張る”と言わなかったので、残念ですが、退塾してもらうことにしました。その子の意識や姿勢を変えてあげられなかった我々の力不足です。」

「まあ、しょうがないね。やるだけのことをやってダメだったんだからね。」

「そうなんですが…。」

「いいよ、いいよ。下村先生の悔しい気持ちは分かるけど、塾は子どもの更生施設でもないし、本人がここで頑張りたいと言わないのなら、もしくは、塾のルールを守れないというのなら、それは受け入れないほうがいい。ダメなものを許しちゃうと、教室全体がおかしくなるからね。」

「そうですね…。」

「それで教室の空気はどうなったの?」

「はい、落ち着きました。」

「じゃあ、大丈夫だ。」

「はい。」

「それから、退塾防止の動きは?」

「はい。社員達とミーティングをして、今の状況を説明して、とにかく生徒や保護者が出してくるサインに対して迅速に動こうということになり、皆、頑張ってくれています!」

「そっか…、皆、頑張ってくれているんだ…。」

「はい。皆、今の状態に危機感を持ってくれていて、これ以上、一人も退塾者を出さないようにしようということで、休みも返上で、夜遅くまで仕事をしています。その結果、三月に入ってからは、今のところ、退塾は出ていません。」

「う~ん…有り難いことだね。」

「そうですね。我々のような、まだまだ小さな塾が、資金力も豊富な大手に対抗しようと思えば、同じような仕事をしていてはダメだと思うんですよね。やっぱり、量で稼ぐしかないという部分もあって、そのことを皆が理解してくれているから、“個勉塾”は強いんだと思います。」

「確かに、他の塾よりも休みなく、他の塾よりも夜遅くまで、他の塾よりもテスト対策を多く、他の塾よりも安い費用で、他の塾よりも生徒や保護者と関わり、そして、他の塾よりも子ども想い、そういう部分で優位性を作り、そんな自分達に誇りを感じて、今までやってきたのが“個勉塾”だからね。」

「はい。」

「私は、そんな社員達を誇りに思うよ。だから、彼らのためにも、この“天下一個別との”戦いには絶対に負けるわけにはいかない。」

「はい。」

 

※明日に続く

 

オーラのないマッチメーカーこと、株式会社WiShipの岡田がお送りしました爆笑