■場面は再び、“天下一個別”の本社ビル内。
「塩川君、チラシの次は“塾エラビ”対策だ。」
「はい。」
「今、何だかんだと言って、ネットの力は大きい。そして、塾紹介のポータルサイトで言えば、やっぱり“塾エラビ”だ。」
「はい。でも、あれは費用が高い割には入塾率が低い状況でして…。」
「だから、そこを何とかするんだ。」
「何とかと言いますと?」
「“塾エラビ”の資料請求に対してはスピードが勝負だ。」
「はい。」
「どこよりも早く電話をする。どこよりも早く資料を送る。」
「確かにそうですが、電話はまだしも、資料は…。」
「メールで送ればいいだろう。」
「へっ?メール…ですか?」
「そうだ。スマホでも見れる資料を直ぐに送るんだ。」
「なるほど。」
「そして、電話するのは、教室からではなく、コールセンターからした方がいい。」
「確かに、教室からだと、どうしても電話が遅くなってしまいますから、その方がいいですね。」
「そうだ。それに、教室長にそれをさせると下手くそな奴もいるから、全体で見ればどうしても面談のアポイントの率が下がってしまうからな。」
「確かに!間違いなくコールセンターにさせた方がいいですね。」
「うむ。いいか、塩川君、もう一度言うが、“塾エラビ”対策は、スピードが命だ!!」
「はい、アイアイサー!」
「タヌーキ、今に見ておけ。このまま、お前の好き勝手にはさせない!この春、ミーの本当の凄さを思い知らせてやるからな!!」
■場面は再び、“からくり屋珈琲店”。
「タヌーキさん、“塾エラビ”の対策ということですか?」
「そうや。」
「あれは、他の塾さんも言ってたんですが、問い合わせはそこそこ来るんですけど、費用ばかりかかって、なかなか入塾しないもので止めようかと…。」
「はあ?それで止めるんかいな?」
「はい。」
「ジブン、考え方が違うわ。」
「えっ?」
「問合せが来るんやったら、それをどう入塾させるのか、それを考えたらええだけやん。何事もどう活かすかという観点で考えなあかん。せっかく問合せが来てるのに、それを捨ててどうすんねん。」
「まあ、そうですけど…。」
「ええか、よう考えてみ。“塾エラビ”を利用する人は、たぶん、何塾かの資料を同時に請求するわな。」
「はい、そうですね。」
「要するに、その中から選ばれなあかんちゅうことや。」
「はい。」
「つまり、何で勝負して、どう選ばれるかがポイントなわけや。」
「はい。」
「そして、多くの大手塾はコールセンターを作って、営業力のある話の上手い社員が電話する対策を打ってくるやろう。」
「恐らく、そうですね。」
「そして、資料と言えば、分厚い豪華なものを送ってくるんやろう。」
「たぶん…。だから、やぱり資料請求では大手に太刀打ちできないと思うんです。」
「ふふ…そこに大手の弱点があるんや。」
「えっ?」
「ええか、我利ちゃん、ここが重要やから、よう聞いときや。保護者は自分の子どもに合っている塾はどこかと探しているわけや。」
「はい、そうです。」
「だから、話が上手い人やのうて、この地域のこと、自分の子どもが通っている学校のこと、そして、その学校のテストのことを、よく知っている人の方がいいんと違うか?」
「あっ!ということは、大手のコールセンターの社員に対抗しようと思えば、教室長から電話するので十分だということですね?」
「まあ、十分ちゅうか、その方が絶対にええちゅうことや。」
「なるほど。」
「例えば、関西の人やのに、東京から全然知らん標準語のおっさんか、おばちゃんか知らんけど、そんなんから電話がかかってきても、心は動かんやろう。」
「確かに。」
「だから、多少電話が遅くなってもええ。教室長からかけるんや。」
「じゃあ、資料請求はどうなんですか?」
「大手は豪華な資料を送るわな。まあ、小賢しいキーツネみたいなタイプやったら、スピードを重視して、メールで送れというかもしれん。」
「はい。」
「でも、それは心のこもらない単なる“紙”か“データ”や。個人塾が大手塾に勝とうと思ったら、資料で勝負したらあかん。資料を届けるんやのうて、“心”を届けるんや。」
「心?」
「そうや。まだ見ぬ人に対して、是非、来てほしいという想いを伝えるんや。そのためには、一番ええのが、手間はかかるけど、“手書きのお手紙”。」
「なるほど。」
「暖かい何か、まあ心遣い的なもんやと思うけど、それを感じてくれたら、絶対に連絡がくる。人間なんてそういうもんやねん。」
「う~ん…よ~く分かります。ちょっと、“心”を送る具体的な策を考えます!」
「おお、そうし。」
「あと、ポスティングや校門前のビラまきはどうしましょう?」
「まあ、しかたっからしたらええけど、面倒くさいやろ。」
「め、め、面倒くさい?!」
「わしやったら、そんなんせんでもええようにするけどな。アハハハ。」
「そうですか…。」
「ええか、我利ちゃん、とにかく、戦略に正解があるわけやないで。根本的には、自分がやりたいと思ったことをやればええんや。今回、わしがアドバイスしたことだって、本当にそれでいいかなんて誰も分からん。もちろん、わしは神様やけど、そのわし自身だって分からん。それでも何かを決めて、前に進むしかないんや。それが経営ちゅうもんや。」
「はい、分かりました!何だか前に進む勇気が湧いてきました!有り難うございます。」
塾でも会社でも、何をするにも“戦略”を立てることは重要である。
しかし、タヌーキが言うように、その“戦略”に正解はないわけで、誰も答えを教えてくれるわけではないのだ。
だから、その答えのないものに断を下すことが、社長しかできない、唯一で最大の仕事なのである。
大手に勝つ戦略(その九)
- チラシは“紹介”を誘発するために打つ。
そのためには、チラシに載せる生徒を厳選すべし。(成績面、ルックス面、人気面を熟考して)
- 資料請求の対応は、“資料”を送るのではなく、“心”を送るべし。
そのためには、手書きの“お手紙”が一番効果的。
~大手塾VS個人塾~
第九ラウンドは、“広告戦略”の攻防・再び(チラシと資料請求対応)の対決だ!
果たして、勝負の行方はいかに!
※明日に続く
オーラのないマッチメーカーこと、株式会社WiShipの岡田がお送りしました。