十二.第六ラウンド・・・ “商品”の攻防(AIロボット VS AV講師軍団)
■場面は再び“からくり屋珈琲店”。
「我利ちゃん、このパフェもの凄く美味いがな~。」
「いつも食べてるやつなんだから、同じ味でしょ?」
「いや~、今日のは格別に美味いわ~。で、もう一つ頼んでええかな?」
「はいはい、どうぞ。本当に厚かましいんだから…やれやれ。」
「悪いな~。」
「で、タヌーキさん、パフェおごる代わりに、今後の戦略について相談させてください。」
「おお、ええで。」
「じゃあ、これから、“天下一個別”はどのような動きをしてくるか教えてもらえませんか?」
「はあ~?そんなん分かるわけないやん。」
「えっ?何故ですか?」
「そりゃそうやがな。わし、キーツネやないんやから、分かるわけないやん。」
「いやいや、そこを推測して、打つ手を考えられるのが、神様でしょ?」
「そんなことないがな。神様かて、分からんもんは分からんで。ましてや、相手も個別指導の神様・キーツネや。あいつ、何といったって、神様大学で主席やで。わしには無理無理、リムリム!」
「もお~、だったらタヌーキさんは単なるパフェの食い逃げじゃないですか!」
「ジブン、頭おかしいんか?わし、何も逃げてへんがな。」
「もういいです。お話になりません!」
「まあでも…。」
「はい?」
「向こうの次の一手は、“商品”の強化と違うかな。」
「えっ?“商品”ですか?」
「そうや。」
「それって、授業コースや料金を変えて来たりするっていうことですか?」
「そういう、鼻クソみたいな、みみっちいことやない。」
「じゃあ、いったい何なんですか?」
「それはわしにも分からんけど、キーツネは昔から成績アップに拘っとったから、全員の成績を安定的に上げる凄い“商品システム”を投入してくるんと違うかな。」
「う~ん…全員の成績を上げるシステムですか…。」
「まあ、そんな感じと違うかな。」
「それは怖いな。…というか!!!!!」
「何やねん。いきなり大きな声出して、ビックリするやないか!」
「やっぱり、推測できるじゃないですか!何で最初に分からないとかって言ったんですか!」
「もお~しつこいな~。分からんもんは分からんって。これは単なるわしの予測やがな。」
「だから!!!さっきからそれを聞いているんですよ!」
「えっ?予測を聞いてたん?ジブン、推測って言ってたやん。」
「あなたはバカか!バカ野郎ですか!“推測”も“予測”も同じでしょ!」
「そうなんや。ふ~ん…。」
「何ですか!そのとぼけた顔は!ほんと、疲れるんですけど…。」
「まあ、そんなカリカリすんなやって。ジブン、寿命縮まんで。」
■場面は再び、“天下一個別”の本社ビル内。
「いいか、塩川君。第六ラウンドの戦略は、いよいよ、アレを投入することにしようか。」
「はい?アレとは何ですか?」
「AIを使った教務システムだ。」
「な、なんですか、それは?」
「キミは知らないのか?関東圏のある教室で実験しているシステムがあるだろう?」
「う~ん…あったような、なかったような。とにかく、私、横文字的なやつには滅法弱くて…。」
「はあ…。キミと話をしていると溜息しか出ない…。」
「すみません。」
「“天下一個別”は、数年前から密かにAIを使った教務システムを開発していて、今、それをある教室で実験運用しているんだ。」
「なるほど。」
「そして、それがいよいよ実用段階にきている。」
「そうなんですか。ちなみに、そのAIというのは何なんですか?」
「ん?キミはAIも知らないのか?」
「はい、勉強不足でして…。」
「AIとは人工知能のことだ。」
「人工知能?!そ、それって…人間が作った脳ミソってことですか?何か気持ち悪いです…。」
「キミはバカなのか!人工知能とは、キミが想像しているような、そういう生々しいもんじゃない。」
「ああ、そうでしたか。」
「まあ、キミにいくら説明しても分からないだろうが、簡単に言うと、人間の頭脳を超える知能を持ったロボットみたいなものを使って、生徒の成績を確実に上げる教務システムを開発したということだ。」
「ふ~ん…つまりは、ロボットが人間の代わりに教えるってことですね?」
「違う!教えるのはあくまでも人間だ。AIは生徒の誤答パターンや苦手分野の傾向を分析して、瞬時に、一人ひとりの生徒に最適なカリキュラムを示し、確実に成績を上げる手助けをするシステムなんだ。だから、宿題だって、個別に最適なものが出せる。」
「ひゃー!それって、凄いですね!最強ロボットじゃないですか!」
「ロボットとは違うが、確かに凄いことは凄い…。」
「まあ、難しいことはよく分からないので、私、“AIロボット”って呼ぶことにします。」
「好きにしろ。」
「いや~、うちの会社は凄いな~。ロボットを作っちゃうなんて。でも、これって相当高かったんじゃないですか?」
「そういう下世話な話をするんじゃない。ただ、ウン億円をつぎ込んで開発したものだ。」
「ウン、ウン、ウン億円ですか!!!」
「声が大きい。しー!シャラップ!!」
「あっ、すみません。」
「とにかく、これを投入して、今度こそ、“個勉塾”をギャフンと言わせてやる!」
※明日に続く
オーラのないマッチメーカーこと、株式会社WiShipの岡田がお送りしました。