■場面は再び、タヌーキと我利サイド。
「だからな、我利ちゃん。仕事ちゅうのは、細かさが必要なんや。きっちり納期を決めて、それを守るための計画を立て、そして、それを遂行するためにはどんな準備が必要かを考えて動かなあかんのや。」
「なるほど、なるほど。」
「たぶん、ジブンとこの社員君達は、納期意識と計画と準備が甘くなってると思うわ。」
「確かにそうかもしれません。」
「もしくは、仮にそれらがある程度できていたとしても、よくありがちなんは生徒の質問対応や振替対応とかに振り回されて、結局、“時間が無くてできませんでした”なんていうパターや。」
「う~ん…それもあるかもしれません。」
「この“できませんでした”ちゅうのが悪循環の始まりや。生徒と約束してることや、保護者に連絡せなあかんことを忘れてしまうと、それが“信頼”を失う原因になる。」
「“信頼”を失う…ですか?」
「そうや。塾運営で一番大事なんは“信頼”や。生徒や保護者、それに講師、そういう人たちからの“信頼”を勝ち取らん限り、生徒数は増えていかへん。」
「なるほど…。」
「で、我利ちゃん、この“信頼”ちゅうのは何やと思う?」
「えっ?信頼ですか?う~ん…。」
「“信頼”というのは、他人との“小さな約束”を守ることの積み重ねで、得られるもんなんや。一つ一つのことを忘れずに、納期を守ることで、徐々に人から信頼される。それは、対生徒も、対保護者も、対講師や、対上司、対会社にしても同じことや。」
「はい。」
「納期も考えず、無計画で動いている限り、人との約束は守れへん。そんなもんや。」
「なるほど、よく分かりました。それで、これを改善していくためにはどうすればいいですか?」
「まずは、“時間”の意識や。」
「えっ?“時間”の意識ですか?」
「そうや。ちゃんと“時間”を守るということから始めなあかん。出勤時間、ミーティングの時間、退勤の時間、面談の時間、決められた時間があるんやったら、まずはそれをちゃんと守らなあかん。時間の乱れは、教室の乱れに繋がる。」
「なるほど。」
「それから、考える“時間”も作らなあかん。教室として、個人として、この一ヶ月どう動くんか、この一週間どう動くんか、今日という一日をどう動くんか、それを考え、計画を立てる“時間”を作らなあかん。そうせんかったら、いつまで経っても行き当たりばったりの教室運営になってしまうわ。」
「確かに、そうですね…。」
■場面は、再び、キーツネと塩川&霧島サイド。
「それからだ。生徒数が多いと、チームワークにも問題が出てくる。」
「あっ、はい、それはどういうことでしょうか?」
「つまり、生徒数が多くなるにつれ、当然、今までよりも自分の目が届かなくなる生徒が増えるはずだろ?」
「はい。」
「それを補うために、他の社員や講師達に役割を振って、仕事を振って、上手く連携を取ってやっていく必要が出てくる。」
「はい。」
「要するに、より情報共有を密にするというチームワークが重要なんだ。それが上手くいかないと、教室はボロボロになる。実際、多くの塾でそれができていないから、大教室がなかなかできないんだ。」
「なるほど。では、今の“個勉塾”もそういう状態になっているんじゃないかということですか?」
「恐らく、そうだろう。さっきキミが報告してくれた夏期講習のテストゼミが終わり切っていないなんていう現象も典型的なその例だ。だって、そうだろう?誰かがその事実に気づき、誰かが担当者に適切な指示やアドバイスを送っておけば、そうはならないだろう。」
「確かにそうですね。それぞれが自分の仕事だけしか見えていなくて、他の人の仕事に目を向けていなかったということですもんね。」
「もしくは、気づいてたけど、自分の役割じゃないから、放っておいたということもあるかもしれない。いずれにしても、それらはチームワークの欠如だ。」
■場面は、再び、タヌーキと我利サイド。
「ええか、我利ちゃん。何でもそうなんやけど、二人以上、人が集まるとそれは一つのチームになるわけやな。」
「はい。」
「つまり、チームが出来上がった以上、自分以外の誰かとコミュニケーションを取りながら仕事するちゅうことは避けては通れへんってことや。だから、チーム内では、常にチンゲンサイとチェリーが必要なんや。」
「えっ?チンゲンサイとチェリーですか?」
「ん?何や、ジブン、この基本的なことを知らんのかいな。」
「ええ、まあ…。」
「チンゲンサイちゅうのはな…あれ?」
「タヌーキさん、もしかしてホウレンソウのことが言いたかったんじゃないんですか?ホウ・レン・ソウ…つまり、報告・連絡・相談っていうやつですけど。」
「ああ、そうとも言うわな。」
「そうとも言うって…。そうとしか言わないと思うんですけど…。」
「何やねん、ジブン。いちいちうるさいわ。」
「あっ、すみません。」
「とにかく、チームワークちゅうのは、常に報告・連絡・相談をしていくことが絶対条件や。もし、教室業務の中で、社員同士や社員と講師の会話が少ないとしたら、それはもう赤信号や。事故が起きるちゅうことやな。」
「そうですね。でも、それはどうやったらいいんですかね?」
「まずは、意識的に声をかけることや。何かあったら、ホウレンソウしてくるやろなんて思わずに、特に何もなくても、頻繁に“どうや?問題あるか?”とか、“あの子、大丈夫ですかね?”みたいな感じで、声をかけ合うことを習慣化することが第一歩やな。」
「なるほど…。あと、チェリーって何ですか?」
「アホ!誰がチェリーボーイやねん!わしかて、それくらい経験してるがな!」
「そんなこと言ってませんよ。何を言っているんですか、ほんとに…。さっき、タヌーキさんがチンゲンサイとチェリーって言ってたじゃないですか。」
「ああそうやった、そうやった。」
「もう~、しっかりしてくださいよ~。」
「めんご、めんご。チェリーちゅうのはな、“チェック”と“リーチ”のことやがな。チームのリーダーは仕事や役割を振りっ放しやのうて、こまめに進捗や状況をチェックして、適切な牌を振るちゅうことをせなあかんということが言いたいわけや。」
「適切な牌と言うのは、指示のことですよね?」
「まあ、そうやな。麻雀で言うとリーチや。」
「何かよく分かりませんけど、とにかく細かくチェックして、適切な指導をしていくっていうことですよね。」
「おお、そうや。」
「そういう観点でいくと、私は指示はしたものの、教室現場でテストゼミ夏の陣が適切に行われているかを具体的にチェックできていませんでしたし、もちろん、改善の指示もできていませんでした。」
「そやろな。だから、今回の状態はぜーーーーーんぶ我利ちゃんの責任や。」
「あっ、はい…。何も反論の余地はありません。」
「せやな。全てはトップの責任ちゅうことやな。アハハハハ。」
「はい。」
「あっ、それから、シンクロナイズドスイミングの指導者に井村ちゃんちゅうのがいるんやけど、知ってるか?」
「はい、メダル請負人と言われている凄い怖い監督ですよね?」
「そうや。彼女もわしの弟子なんやけどな…。」
「いやいや、あの人は個別指導の人じゃないんだから、違うでしょ!」
「まあ、そんな細かいことは気にせんっでええがな。ジブンもケツの穴が小っちゃいの~。」
「別に小さくはないです!」
「えええーーー!じゃあ、ケツの穴が大きいんかいな!!!」
「どうでもいいですって!いい加減にしてください!!!」
「ああ、そう…。ごめんちゃい。」
「で、井村監督がどうかしたんですか?」
「おお、そうや、そうや。ジブンも一応、社員達を指導する立場なんやから、参考までに、彼女が指導する時に意識してる「叱る絶対三点セット」というのを教えといたるわ。」
「はい、教えてください。」
一.悪いところをハッキリ指摘する
二.直す方法を指導する
三.直ったかどうかをチェックし、OKかNGかをきちんと伝える
「これ、指導者としての大事なスタンスを表してると思うで。叱るだけで直す方法を言わなかったら、自信を無くすだけやからな。」
「確かにそうですね。私も肝に銘じておきます。」
※来週月曜日に続く
オーラのないマッチメーカーこと、株式会社WiShipの岡田がお送りしました。