十.第五ラウンド・・・ “信頼”の攻防(ホスピタリティVS魔法の手帳)
■場面は、再び“からくり屋珈琲店”。
「タヌーキさん、これから、どう挽回すればよろしいでしょうか?私に戦略を授けてください。」
「まあ、焦んなや。あんな、戦略を立てるためには、まずは自塾の状況をしっかり分析せなあかんのや。社員達がどういう状況に陥っていて、この結果になったのか、そういう根本的な要因を理解せんかったら、何らかの手を打っても上滑りするだけやろ。」
「なるほど。戦略の前に、自己分析なんですね。」
「そうや。それは戦略を立てる上での、基本中の基本や。ジブン、そんなことも分からずに、よう今まで社長やってこれたな。」
「あっ、はい、すみません…。」
「で、何故、夏期講習のテストゼミが終わり切らんちゅう状況になってんねん。」
「う~ん…何でなんですかね?」
「ひぇー!ジブン、そんなことも分からんのかいな。ビックリクリクリクリックリって感じやで。」
「何ですか?それは。」
「ビックリしたことを表す言葉の最上級や。」
「へえ~。」
「何やねん。その冷めた目は。」
「あっ、すみません。タヌーキさんのギャグにしてはかなりショボかったので。」
「えええー!ショボいって?!ガックリ…。」
「もお~、わざとらしく落ち込まないでくださいよ。それよりも状況分析の話をしてくださいよ。」
「おお、そうや、そうや。ジブンに付き合ってしょうもない話をしてる場合やない。」
「何が私に付き合ってですか…。ほんとに、もう…。」
「えっ?何か言った?」
「いえ、何でもありません。」
「じゃあ、ジブンとこの今の状況を一緒に考えてみようかいな。」
「はい、お願いします。」
「まず、ブサイクなジブンでも分かってると思うけど、教室の空気を作るんは中三生や。人数も多いやろうし、塾に来る回数も多いやろうからな。」
「確かにそうですね。」
「でも、その中三生が夏期講習で不達成感を感じてるとしたら、恐らく教室全体を見ても、気が緩んだ空気ちゅうか、勉強を頑張る空気になってないちゅうことが考えられる。」
「はい。」
「ほんで、その状況を計るバロメーターは、欠席や遅刻が多いか、宿題忘れが多いか、自習中のおしゃべりが多いか、そのあたりに表れているはずや。」
「なるほど。言われてみれば、九月に入ってから、確かに多いような気がします。」
「だったら、早いこと手を打たな、手遅れになるで。」
「はい。でも、どう改善していけばいいのか…。」
「そこでや、何故、そうなっているのかちゅう原因をまずは探らなあかんわけや。」
「はい…。」
「もう一回聞くけど、ジブン、何か思い当たるふしはないか?」
「う~ん…もしかして社員達の気の緩みですかね?」
「もちろん、一般的にはそういうのもあるかもしれんけど、ジブンとこの社員君たちは真面目に頑張るタイプばかりやから、それは考えにくいやろ。」
「まあ、そうですね。」
「じゃあ、何や?」
「すみません。やっぱり分かりません。」
「わしが思うに、恐らく二つの問題があると思うわ。」
「はい、その二つとは?」
「一つは仕事の仕方の問題。もう一つはチームワークの問題や。」
「仕事の仕方とチームワーク…ですか?!」
■場面は変わって、キーツネと塩川&霧島サイド。
「ミーの見立てでは、“個勉塾”の弱点は地域で一番の生徒数がいるということだと思う。」
「えっ?地域で一番の生徒数がいることが弱点ですって?!」
「そうだ。今回の夏期講習の失敗もそれが大きく影響しているはずだ。」
「そ、そ、それは…ど、ど、どういうことですか?」
「塩川君、いちいち、噛むな。」
「あっ、はい、すみません。」
「つまりだ。生徒数が多いと、それだけ情報量も仕事量も多くなる。そして、ちゃんと優先順位を考えて動かないと、生徒に振り回される状況も多くなる。」
「はい。」
「要するに、仕事の仕方をちゃんと確立しておかなければ、生徒数が多い教室は上手くいかなくなるということなんだ。」
「なるほど、勉強になります。」
「あの塾はまだ若い社員が多いと聞くが、恐らく、そのあたりの仕事の仕方が分かっていない。いや、もしかして、分かっていないというよりも、少ない人数の教室運営のスタイルから脱却できていないと言った方がいいかもしれないが。」
「なるほど。」
「個別指導は情報が命だ。個別指導塾には、様々な性格・学力・目的を持った生徒が通って来ていて、そして、色々なタイプの保護者がいて、スタッフにも様々な特性を持った講師がいる。日々の授業にしても、生徒のモチベーションも違えば、講師のコンデションも違う。そういった中で、教室運営をするわけだから、とにかく多種多様な情報を収集し、処理して、適切に動くことが必要なんだ。それは、もちろん、生徒数が多くなればなるほど、複雑になるわけだ。」
「確かにそうですね。」
「それなのに、無計画で行き当たりばったりの動きをする塾人が多い。そんな大雑把なやり方で上手くいくはずがないんだ。だから、この仕事をする上では、細かさが必要なんだよ。分かるか?塩川君。」
「はい、その点、私も割と細かいタイプでして…。」
「嘘はいい!キミが大雑把すぎるのはバレバレだ!」
「あっ、はい、すみません…。」
※明日に続く
オーラのないマッチメーカーこと、株式会社WiShipの岡田がお送りしました。