■場面は変わって、タヌーキと我利サイド。
「えっ?うちの塾のウイークポイントが、“問合せ対応”と“入塾面談”?」
「そうや。」
「アハハハ。それはないですよ。“問合せ対応”はまだしも、我が“個勉塾”が一番力を入れてることは“入塾面談”ですよ。それがウイークポイントなわけがありませんよ。タヌーキさんったら、悪いご冗談を。」
「冗談やない。だいたい得意としているものの裏側に、ウイークポインちゅうのは潜んでいるもんや。」
「どういうことですか?」
「あんな、人間誰しもそうやけどな、“苦手”なものは意識するさかい、慎重に行動するわな。練習したり、事前準備も入念にするやろ。」
「はい。」
「でも、得意なものは、どうや?特に準備もせず、やってしまうやろ。まあ、実際、ある程度できるやろうしな。」
「そうですね。」
「だから、そこに、隙が生まれるんや!」
「す、隙ですか!」
■場面はキーツネと塩川サイド。
「なるほど!それが彼らの隙なんですね!」
「だから、これから、我が塾は“問合せの電話対応”と“入塾面談”を強化する作戦に打って出る。」
「はい、具体的には?」
「関東圏から、電話対応のスペシャリスト軍団“コールセンター”の社員達を関西に呼べ。そして、面談入塾率の高い教室長達も関西に期間限定で呼ぶんだ。」
「でも、そんなことしたら、関東圏が…。」
「大丈夫だ。超大手個別指導塾の“天下一個別”には人材がいる。」
「はい、私を筆頭にですか?」
「いや、君は違う。」
「えっ?!」
「君のことはどうでもいい。いいか、基本的には人材の層が厚いのが大手の強みなんだ。その部分については、個人塾は逆立ちしても勝てない。」
「なるほど。」
「だから、大手の戦略としては、個人塾ができないことをやる。それが基本路線だ。」
「はい、勉強になります!」
「じゃあ、早速、手配してくれ。」
「はい、分かりました。ただ…。」
「ただ、何だ?」
「“問合せ対応”や“入塾面談”の強化は分かったのですが、肝心の問合せがないことには…。」
「その点は既に手を打ってある。」
「はい?」
「来週からのチラシには、“個勉塾”と同じように、“最大二ヶ月無料体験”を載せている。チラシ枚数も予算を度外視して、莫大に増やした。ネット広告も投入した。だから、絶対に問合せは増える。そして、そのことで、これから“個勉塾”と我が“天下一個別”を比較検討する顧客が増えるはずだ。」
「なるほど!それで、“問合せ対応”と“入塾面談”で差別化をはかり、顧客をかっさらうという作戦なんですね。」
「そうだ。」
「さすが、キーツネさん!素晴らしいです!しびれます!」
「もういいから、早く動け。」
「アイアイサー!」
「ほんと、あいつは軽い、軽すぎる…。」
■再び、タヌーキと我利サイド。
「えっ?“天下一個別”はそこまでやってくるですか?」
「恐らく、キーツネならやるやろ。」
「でも、いくら何でも関東から人材まで呼ぶなんて、やり過ぎでは…。」
「我利ちゃん、それくらい徹底した攻撃を仕掛けてくるんが、本物の大手ちゅうもんや。」
「うっ…。」
「ええか、大手には“大手”のプライドがあるさかい、“天下一個別”はどうしてもこの戦いには負けられへんと思ってるわ。」
「そうですか…。ちょっと、怖いです…。」
「あれ?ジブン、ビビッてんの?」
「ええ、正直、ちょっとビビッてます…。」
「ジブン、そういうところ、十二年経った今も、昔と全然変わらんわな。ほんま、ショボショボや。アハハ。」
「はい、残念ながら、なかなか成長していなくて。すみません…。」
「まあ、ええわ。で、それに対する対抗策やけどな。」
「はい。」
「向こうの、“入塾面談のスペシャリスト”達は、どういう面談をするか、ジブン分かるか?」
「う~ん…どうなんでしょう?」
「あいつらの最大の手法はヒアリングとコーチングや。」
「ヒアリングとコーチング?」
「そうや。徹底して訓練されているから、相手のニーズを聞き出す質問のテクニックを身に着けてるはずや。」
「なるほど。」
「それから、コーチングという技術も持ってるやろ。コーチングちゅうのは簡単に言うと、相手の意見を尊重して肯定する姿勢を保った状態で、話をよく聴き、感じたことを伝え、相手のモチベーションを上げて自発的な行動を促す手法のことや。」
「そ、そ、そんな手法があるんですか?」
「そうや。」
「何か、相当ヤバい気がしてきました。そんな手法を使われたら、負けてしまいます。こっちも何らかの対抗するテクニックを磨かないと…。」
「アハハハ。そんなんいらん。」
「えっ?どうしてですか?」
「まあ、テクニックは無いよりはあったほうがええかもしれんけど、それは面談の本質やないからや。」
「はい…。」
「面談で大事なんは、ベタな話やけど、“心”や。」
「“心”…ですか…。」
「そうや。つまりは、目の前の子どもや保護者を何とかしてやりたいという“気持ち”やで。それが無かったらどんなテクニックを使っても人の心は動かんわ。」
「確かにそうですけど…。」
「あんな、ジブンもこの業界長いやろうから、分かってるとは思うけど、塾に来る奴ちゅうのは、何となく来るとか、冷やかしで来るとか、そういうのやないで。あくまでも、“勉強をできるようになりたい。何とか助けてほしい。”ちゅう思いで来るんや。」
「はい。」
「だから、まずは相手の話をちゃんと聞いて、それを素直に心で感じて、この子を、この親を何とか助けてあげたいと思うこと。これが面談の基本や。」
「なるほど…。」
「でも、実はな、この基本を理解してない塾が殆どなんや。」
「えっ?そうなんですか?」
「そうや。実際、こんな話、他塾では殆どされへん。生徒数がどうだとか、売上がどうだとか、そういう話ばかりや。もちろん、生徒数や売上は大事やで。ボランティアやないんやからな。でも、その前に、目の前の人を助けるんが塾人としての仕事やという自覚を持たなあかん。それを持つだけでも十分、他塾との差別化になるわ。」
「なるほど。そのことはもう一度、社員の皆に伝えます。」
「そうやな。」
「あと、入塾面談で“天下一個別”に対抗する方法はありますか?」
「もう一つ、今の“天下一個別”には絶対にできひんことがあるやろ。」
「えっ?それは何ですか?」
「地元情報や。」
「地元情報…ですか?」
「そう。この学校はこうだとか、この学校のテストの傾向はこうだとか、この志望校の合格基準はこうだとか、ずっとこの地域でやってるからこそ、持っている情報っていうもんがあるやろ。」
「はい、それはもちろんあります。でも、相手も大手ですから、ある程度、情報は持っているのでは?」
「そりゃあ、相手は、“大手だから情報量も豊富です”的な戦略で来るとは思うけど、大学受験ならまだしも、小・中学校においては、ネットで調べたら分かるような程度の情報では役に立たんで。それよりも、地元密着ならではの情報をしっかり伝えることや。この学校の定期テストはこういう傾向で、こういう勉強をしたほうがええみたいな具体的な話をすることや。そうすると信頼感がぐっと高まるわ。」
「なるほど、なるほど。」
「ええか、我利ちゃん、これから四月にかけての第二ラウンドでは、必ず“天下一個別”と比較される面談が増えるさかい、今話をしたように“心”と“地元情報”で勝負するんや!そうしたら、絶対に勝てる!」
「分かりました!タヌーキさん、有り難うございます!」
「じゃあ、もう一杯ラーメン頼んでええか?」
「はい、もちろん、何倍でも大丈夫です!」
「ジブン、ほんま、ゲンキンな奴やで。ショボすぎるわ…。」
大手に勝つ戦略(その二)
入塾面談時の大手の磨かれたテクニックには、目の前の人を何とかしてあげたいと思う“心”と、“地元ならではの情報”で対抗すること
~大手塾VS個人塾~
果たして、第二ラウンドの勝負の行方はいかに!
※明日(8/13)~8/15までは弊社のお盆休みの為、ブログも休みます。続きは8/16(月)です!
オーラのないマッチメーカーこと、株式会社WiShipの岡田がお送りしました。