刺さったままのトゲ
今日は以前書いたブログのリバイバル。
今は教室現場に立っていない私ですが、これでも昔はバリバリの教室長だったんですよ(笑)。
サラリーマン時代、教室長現場にいなかったのは一年間だけ。
エリアマネージャーをしている時も、教室長を兼務したりして、教室にいましたからね。
だから、今でもいっぱい当時のトゲが刺さったままです。
ん?トゲ?
はい、救えなかった生徒達への後悔(=トゲ)です。
随分、昔の話です。
私が新入社員の時。
最初のトゲが突き刺ささりました。
私が配属された教室に、不登校の中3生でI君という子がいたのですが、塾はたまに休むこともありましたが、それなりに頑張って来てくれていました。
でも、ほとんど喋ってくれない生徒で、私が授業も担当していたのですが、なかなかコミュニケーションが取れなかったんですよね。
だから、私には、彼が何を考え、何を望んでいるのか、さっぱり分かりませんでした。
そして、困り果てた私は、半ば強引に、交換日記をしようと彼に提案して、そのやり取りをスタートさせたのです。
交換日記なんて柄にもなかったですが、何かの突破口になるんじゃないかと期待してね。
でも、彼が書いてくるのは、ほんの数行の文章。
しかも、やったことが書いてあるだけで、彼の心の内は全く書いてくれませんでした。
一応、授業はそれなりに進められるものの、とてもとても高校受験を突破できるだけの進捗ではありません。
たぶん、彼は高校に行く気はないんだろうなって、私は思いましたね。
だって、「高校には行きたい?」って聞いても、頷きもしなかったですからね。
だから、私、正直どうしていいのか分かりませんでした。
それどころか、やる気のない面倒な子だと思っていたんだと思います。
まあ、こんな膠着状態がしばらく続いたわけです。
すると、ある日の交換日記に、こう書かれていました。
「先生、僕、本当は高校に行きたい…」
えっ!…
私、自分の目を疑って、何度も見直しましたよ。
確かに書かれている!初めて彼自身の気持ちが。
しかも、高校に行きたいって…。
この時のこと、私は今でも鮮明に覚えています。
えっ?何故覚えているのかって?
それは、「先生」と呼ばれていた自分が最低な塾の先生だと気付かされたからです。
そう、彼のことをやる気のないどうしようもない生徒で、どうせ高校にも行く気がないんだと決めつけていた最低の先生、それが当時の私でした。
私は無性に申し訳ない気持ちになり、この子を何とか高校に行かせてやりたいと強く思いました。
それ以降、他の講師の先生にも協力してもらって、何とか受験の前日まで頑張ってきました。
いよいよ、受験本番は明日。
「明日、頑張って来いよ!」と声をかけて、彼を塾から送り出しました。
そして、翌日の夜。
受験の手ごたえを確認するために、お母さんに電話しました。
「I君、今日はどうでした?」
「先生、すみません…。実は、あの子、受験に行けなかったんです…。」
「えっ…」
その日以来、彼は塾には来ませんでした。
電話にも出てくれませんでした。
私は何とも言えない気持ちになりました。
だって、勇気を出して、私だけに「高校に行きたい」って言ってくれたのに、私は彼の希望を叶えてあげることはできなかったのです。
もちろん、彼は不登校生だったので、受験当日にテストを受けに行けなかったのは、もしかして、私の責任ではないのかもしれません。
でも、この時の私は、そんなふうに自分を慰めることはできませんでしたね。
とにかく、自分の力不足を責めました。
まあ、冷静になって考えてみると、我々はスーパーマンでも何でもないんだから、全ての生徒の望みを叶えてやることなんてできません。
そんなことができると思っているとしたら、とんでもない勘違い野郎です(笑)。
でも、今でも、この時の「トゲ」が私の心の中に刺さったままなんですよね。
この生徒は、新米の塾の先生だった私に、「先生」という仕事の難しさと尊さを教えてくれた生徒の一人です。
それにしても、彼は今どうしてるのかな?
もう40歳半ばのおっさんになっているはずですが(笑)。
オーラのないマッチメーカーこと、株式会社WiShipの岡田でした